怒りと中道:感情を味方につける方法

 

感情は、私たちを導く道標。
どんな感情も、否定したり、抑圧したりする必要はないんです。
そんな中でも今日は「怒り」を手がかりに、陰と陽の統合を行い、
「中道」を見出すための実践を紹介したいと思います。

まずは、怒りの感情が湧いた時のマインドフルネス:
a.「感情に気が付く」
b.「感情を身体感覚として感じる」
c.「感情と距離をとる」
この3つによって怒りに巻き込まれることなく、いまこの瞬間にとどまりやすくなると同時に、冷静に客観的に怒りに向き合うことができるようになります。
怒りに限らずすべての「感情」は、端的に表現すれば、アドレナリンやコルチゾールといったホルモンや神経伝達物質が脳内に引き起こす化学反応です。
それらが身体に引き起こす感覚(ドキドキする、顔が熱くなる、手が震える、など)を、いまこの瞬間に神経が感じていることを、ジャッジすることなく、ただ感じることによって、意識の焦点を思考から身体感覚へとシフトさせることで、自然と感情との距離が生まれ、徐々にその化学反応がおさまっていくのを観察する余裕が生まれると思います。

第1ステップ:
怒りの原因を明確にする。
マインドフルネスで怒りの感情が静かになったら今度は、その怒りの原因を探っていきます。
ここではあなたの主観的な意見や解釈、感情や憶測は交えずに、客観的事実、起きた出来事だけを明確にしていきます。
「いつ」「どこで」「誰の」「どんな言動に」怒りを感じたのか。それだけを簡潔に言語化していきます。鮮明であればあるほど、このあとの作業はスムーズになります。
例えば、「20xx年xx月の週末の夕方、帰省した際、実家のテレビの前で、妹に、体格と見た目について悪口を言われた」などというふうに、できるだけ簡潔に具体的にします(「見下された」「傷ついた」「悲しかった」「プライドを傷つけられた」「性格が悪い」「意地悪」「デリカシーがない」などはすべて、「主観的な意見や解釈、感情や憶測」であり、「客観的事実」ではないことは、含みません)。

第2ステップ:
鏡の法則と投影の確認。
第1ステップで明確にした、怒りの原因となる事実や出来事と同様の行い、または類似する行為、同じ意味を持つ行動を、過去に自分も他人に対してしていたことを、さまざまな角度から確認します。
この確認作業によって、「自分の抑圧している影の部分」(それはつまり、自分が握りしめいている「こうあるべき」という幻想、または偏った価値観)が明らかになります。
その結果、対象に対する怒りが鎮まるとともに、外側の世界は自己の内面を反映している、という相関関係に気が付けると思います。
私たちは、誰かの特徴や言動に対してポジティブな感情やネガティブな感情を感じる時、非常に多くのケースで、それと同じ特徴を自分も持っている、あるいはそれと同じ言動を自分もしたことがあるか現在進行形でしている、ということがあります。そしてネガティブな感情の場合はその言動や特性を抑圧している、受け入れられていない、あるいは不満に思っている、ということが多いようです。
先の「妹に体型や見た目について悪口を言われた」例では、「自分も他人の見た目に対して、悪口を言ったのはいつか」「自分に対してはどうか」「他人や自分の、コンプレックスを刺激したのはいつか」「他人や自分の、”努力では変えられない部分”をイジったのはいつか」、どんどん思い出していきます。
人間って、他人にされた嫌なことはよく覚えてるのに、自分が誰かにしたことはあんまり覚えていたくないですよねw
でも罪悪感を感じたおこないや、恥に感じたおこないは、気付かないうちに潜在意識の中で抑圧されて、「影」の部分として蓄積していきます。
そしてその「影」を無視しようとして、自分の明るい部分に意識の光を当てれば当てるほど、必然的にその「影」はより濃くなって見えづらくなってしまう、という悪循環が起こります。
だから怒りの感情は、自分のどのような部分を自分で抑圧しているのか、どのような「べき、べきじゃない」を握りしめているのかを知る、自分の「影」を知る貴重な道標になると思います。
そしてその抑圧された部分も確かに自分の一部であって、それを受け入れられていないことによって偏った感情が生まれる、ということを自覚できると、それだけで現実が変わり始めることはよくあります。
この第2ステップのワークを完了することによって、「自分にも相手にも等しく同じ特性が備わっている」ことがわかるので「自分は正しくて、相手は間違っている」などといった幻想が覆り、自分と他者との間の陰と陽のバランスが取り戻されます。
またそれと同時に自分の中での抑圧されていた「影」の部分に意識の光があたり、自分の中の失われていた陰の陽のバランスを取り戻す準備が整います。そしてこののちの第4ステップでこの自分の中の陰と陽のバランスを取り戻していきます。それによって自分の影の部分を統合していくことができます。
(この部分のプロセスについてはこちらで詳しく説明しています)

第3ステップ:
ここでは第1ステップで明らかにした、怒りの原因となる事実や出来事の陰と陽のバランスを整えます。
先の例で言うならば、「妹に悪口を言われたことに、どんな恩恵やギフトがあったか」を丹念に見ていきます。
悪口を言われたことで、どんな学びを得ることができたか。
それが自分の人生にどう役立っているか。
どんな成長につながっているか。
自分の大切なことにどう貢献したか。
2次的、3次的利点も探します。
悪口を言われたことに感謝を感じられるようになるまで、自分に問いかけ続けます。
「体型をからかわれたことで、筋トレのモチベーションが上がった」
「より頻繁にジムに通うようになって、ジム友が増えた」
「より頻繁にジムに通うようになって、時間の管理術が上手くなった」
「筋トレや健康管理に関する知識が増えた」
「食事にも気を遣うようになった」
「体脂肪率と血圧が下がって、より健康的になった」
こんな感じで、悪口を言われたことに感謝を感じられるようになるまで、20 ~ 50個はメリットを見つけてみてください。
悪口を言われることにもメリットがあることがはっきり認識できるようになると、また同じ悪口を言われたとしても、自ずと自分の感じ方は変わってきます。
そして相手を変えよう、コントロールしようという気持ちが薄まっていきます。

第4ステップ:
罪悪感の解消。
第2ステップでは、怒りを感じた相手がしたことと同じようなことを自分もしていた、またはしている、と言う確認を行いました。
それによって相手に対する怒りはおさまるかもしれないけど、自分の影の部分をはっきりと自覚したことで、罪悪感を感じたり自己嫌悪を感じたりするかもしれません。
そこで、この第4ステップでは、自分の影の部分が、相手にとってどのようにメリットになっているのかを、丁寧にみていきます。
先の例を使って具体的にいうなら、「自分が悪口を言ったことで、相手にどんな利点があったか」をみていきます。
これも第3ステップ同様、さまざまな角度から、あらゆる恩恵やギフト、学びや成長の機会、役に立ったことなどを列挙していきます。
これによって自分の中の陰と陽のバランスを整えます。

人間には約4600種類の特性があると言われています。そして私たちは誰でも、これらすべての特性を兼ね備えています。例外はないそうです。私たちそれぞれが個性的に見えるのは、その表現がそれぞれ異なるからで、誰かと比べて自分の方が優しいとか怒りっぽい、なんてことはありません。同じ個人でも、立場や状況、タイミングや相手によって、見せる顔や性格もさまざまです。自分にも相手にも似たようなところがあると思えば、誰かを批判したくなる気持ちも薄らぎます。
そしてどんな特性も、それ自体は中立的なものです。それらを「良い」とか「悪い」とかジャッジしているのは、私たちの考え方、捉え方なんです。
(この部分の理論的背景についてこちらで説明しています)

第5ステップ:
他人に貼り付けたレッテルの解消と、相手の陰陽のバランスの回復。
ここでは第1ステップで明らかにした、相手の嫌な言動や特性の真逆を見つけていく、という作業を行います。
また同じ例を使うなら、具体的には、「妹が私を褒めた」時のことや「励ましてくれた」時のことを思い出していきます。
相手に対して怒りを感じるのは、本来はみんなが同じ特性を兼ね備えているのに、相手の特性の一部分しか見えなくなっているのが原因、とも言えると思います。

第6ステップ:
共時性ともつれ、場の陰陽のバランスの確認。
第1ステップで明確にした「20xx年xx月の週末の夕方、帰省した際、実家のテレビの前で、妹に、体格と見た目について悪口を言われた」その瞬間、悪口とは逆の「称賛」や「励まし」「感謝」などを表現してくれていたのは誰でしょうか。
妹が私に対して悪口を言っていたその時、誰かが質的にも量的にも同等の「称賛」や「感謝」を私に対して表現してくれていたはずなんです。
私たちが存在する「場」には、すべての行動や出来事に「バランス」という秩序が存在しています。そしてそのバランスは「陰と陽」の間にも存在しています。その妙なる調和に気付くためのワークです。

第7ステップ:
第1ステップで明確にした怒りの原因について(同じ例えを使うなら、「妹に悪口を言われた」ことについて)、もしその出来事が起こっていなかったら起こり得たであろうデメリットを探していきます。
これによって「もしあの時あれが起こっていなければ」と言った無意味な妄想や、その原因について残っている憤りを消し去ります。
もし自分の望み通りになっていたら、どんな不利益やデメリットや不都合があり得たか。できるだけ探していきます。

これらのステップを1つずつ完了させていくと、自分が怒りを感じた原因(妹の悪口)には、メリットと同じだけのデメリットがあって、利益や不利益、好都合や不都合、すべての陰と陽が釣り合って、バランスを保っていることが体感として感じられると思います。
そしてそれらはすべてそうなるべくしてそうなっていて、自分の今までの人生もこれからの人生も、少しも変えたりコントロールしたりする必要はない、ということが心の底から理解できるようになると思います。そしてその奇跡に、深い愛と感謝を感じると思います。

第8ステップ:
相手の陰陽のバランスを取り戻す。
第1ステップで、怒りの対象を明確にしました(上記の例では「妹」)。
第2ステップから第7ステップまでは、その対象のネガティブな側面の陰陽のバランスをとる、という作業を行いましたが、ここからは反対に、対象のポジティブな側面の陰陽のバランスをとる、という作業を行います。

妹の持つ好ましい特性や言動について、それを具体的に言語化し、残りの6つの質問を、ポジティブ・ネガティブを逆にして、自問自答していきます。

この陰陽を統合するワークは、ポジティブ思考ではなく、バランス思考、ニュートラル思考とでもいうべき考え方、捉え方を日常生活にインストールする非常に強力なワークです。
それによって、例えば「悪口は言ってもいいし、言わなくてもいい。同様に称賛も感謝も表現してもいいし、しなくてもいい。どちらにもメリット・デメリットそれぞれ等しくあって、いままで起きたことは起こるべくして起こったことだし、これから起きることは変える必要もコントロールする必要もない。どちらもいいし、どちらでもいいという、ありのままをありのまま受け入れることができる」ようになります。
自分の中の陰陽を統合していくたびに、自分自身の内面の統合が進み、陰の部分も陽の部分も、等しくかけがえのない自分自身の一部で、それは自分以外の人たちもみんな一緒、そして自分も他人も、少しも変えたりコントロールしたりする必要なんてない、そんなことに自然と納得がいくようになります。

そのためのきっかけとガイドラインになるのが「怒り」をはじめとする、偏った感情たちなんです。
「怒り」をネガティブなものと決めつけなければ、心はもっと軽くなる。
あなたはもっと自由になれる。

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